近年、一般消費者向けに普及しつつある毛髪ホルモン量測定キットについて、専門医はどのように捉えているのでしょうか。今回は、最近、プライベートで亀岡市の蜂駆除を依頼した内分泌学を専門とする医師に、その意義と限界点についてお話を伺いました。「毛髪を用いたホルモン測定は、医療現場でも研究が進められている分野の一つです。特に、過去数ヶ月間の慢性的なホルモン暴露量を評価するのに適しているとされています。例えば、慢性的なストレス状態を把握するためにコルチゾールを測定する際などに有用な場合があります」と医師は語ります。「血液検査は採血時点でのホルモン値を反映しますが、ホルモンによっては日内変動が大きいものや、食事、運動、ストレスなど短期的な要因で数値が変動しやすいものもあります。その点、毛髪は比較的長期的な平均値を捉えることができるため、瞬間的な変動に左右されにくいというメリットがあります。自宅で手軽に検体を採取できるという利便性も、健康管理への意識を高めるきっかけとしては評価できるでしょう」とのこと。一方で、限界点についても指摘がありました。「まず、毛髪検査で測定できるホルモンの種類は限られていますし、全てのホルモンにおいて血液検査と同等の精度や臨床的意義が確立されているわけではありません。また、結果の解釈には注意が必要です。キットから提供される標準値はあくまで一般的な目安であり、個人の体質や状況によって適切な範囲は異なります。毛髪の処理方法や分析方法によっても数値が変動する可能性があり、キット間の結果を単純比較することも難しい場合があります」と医師は続けます。「最も重要なのは、これらのキットはあくまでスクリーニングや健康管理の補助ツールであり、医学的な診断に代わるものではないということです。何らかの症状がある場合や、検査結果に異常が見られた場合は、自己判断せずに必ず医療機関を受診し、医師の診断と指示を仰ぐようにしてください。キットの結果だけで治療方針を決定したり、薬の服用を開始したりすることは絶対に避けるべきです」。毛髪ホルモン量測定キットは、自身の健康状態への関心を深め、生活習慣を見直すきっかけにはなり得ますが、その結果は慎重に受け止め、必要に応じて専門医に相談することが賢明な利用法と言えそうです。