年齢を重ねるとともに、髪の毛に変化が現れるのは自然なことです。白髪が増えたり、髪にハリやコシがなくなったり、そして多くの方が気にするのが「薄毛」の問題です。加齢による薄毛は、男性だけでなく女性にとっても深刻な悩みとなり得ます。なぜ年齢とともに髪は薄くなりやすいのか、そのメカニズムと、避けられない変化と上手に付き合っていくための方法について考えてみましょう。加齢による薄毛の主な原因の一つは、「ヘアサイクルの変化」です。髪の毛には成長期、退行期、休止期というサイクルがあり、健康な状態であればこのサイクルが規則正しく繰り返されます。しかし、年齢とともにこのヘアサイクルが乱れやすくなります。特に、髪が太く長く成長する「成長期」が短縮し、髪が抜け落ちる準備をする「休止期」が長くなる傾向があります。その結果、髪の毛が十分に成長する前に抜け落ちてしまったり、新しい髪が生えてくるまでの時間が長くなったりして、全体的に髪のボリュームが減少し、薄毛に見えるようになるのです。また、「毛母細胞の働きの低下」も加齢による薄毛の大きな要因です。毛母細胞は、髪の毛を作り出す工場のような役割を担っていますが、加齢とともに細胞分裂の能力が低下したり、細胞そのものの数が減少したりします。これにより、新しく生えてくる髪の毛が細くなったり、弱々しくなったりして、薄毛が進行します。さらに、「頭皮環境の変化」も無視できません。年齢とともに頭皮も乾燥しやすくなったり、血行が悪くなったり、硬くなったりします。頭皮の乾燥はフケやかゆみを引き起こし、バリア機能の低下を招きます。血行不良は、毛母細胞に必要な栄養素や酸素が届きにくくなる原因となります。これらの頭皮環境の悪化は、健康な髪の育成を妨げ、薄毛を助長します。「ホルモンバランスの変化」も、特に女性の加齢による薄毛に大きく関わっています。女性ホルモンであるエストロゲンには、髪の成長期を持続させる働きがありますが、更年期を迎えるとエストロゲンの分泌量が急激に減少し、相対的に男性ホルモンの影響が強まることで薄毛が進行しやすくなります。